鏡花水月

キョウカスイゲツ

2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

籠の鳥を放つ(二)

「持たざる者」 もしも人間が他の動物に劣らない強固な牙や爪を持つのなら、それを手がかりにーそれを本能に据え置いてー生き延びようとしただろう。ところが、人間は何も持たないともいえる状態でこの世界に生まれ落ちる。 「持たざる」ことを嘆き、自身を…

籠の鳥を放つ(一)

「物語」の始まり 良き指導者は「待て」が言える者だ、と何処かで目にした一文を、これまで幾度となく思い返しては、その意味するところを考え続けてきた。 「行け」や「行くな」の指示は理解しやすいが、「待て」という指示は何を示しているのだろう。 よく…

船を渡す

沈黙する海 人間を海に浮かぶ器に例えたのは、不確かな記憶によればゲーテだった。 確かに人間というのは、身体という無意識の海に、中に小さな脳の入る頭蓋という容器を浮かべている、というふうにも例えられるのかもしれない。 身体教育研究所所長・野口裕…