鏡花水月

キョウカスイゲツ

時の断層

旅の途上 地図を持たずにその土地を歩きたいと思っていた。 通い慣れた道は、順路や距離を意識に上らせることなく歩むことができる。速度計算をせずとも、時間経過の大凡の見当がつく。そんなふうに、歩いてみたいと思っていた。 初めて踏む土地の、眼にする…

「阿留辺幾夜宇和」(二)

明恵上人 「ユングの言う個性化、あるいは自己実現について、日本人としてはどのように考えるべきかが、私にとって終生の課題となった」と記した河合隼雄氏は、「個性化の過程」についての洞察を深めることをも目的の一つとして、明恵上人を取り上げ『明恵 …

「阿留辺幾夜宇和」(一)

「心を開く」 「心を開く」という表現がある。心は開いたり閉じたりする構造であると、いつから言われ認知されたのか知らない。 例えば、面接法でオープンクエスチョン、あるいはクローズドクエスチョンというのがある。これは、質問者が回答者に「語らせる…

萩再訪

萩再訪 その土地の風土に触れ、読書で得た知識を体感的に自分の中に取り入れたいという思いを持っての旅であったが、実際にはほとんど何も見ていなかったような気がしていた。現地で出会えた、自分の興味のある歴史人物の直筆の書の一言一句が、想像していた…

旅をすること 旅の動機はわからない。私的な旅行などしたこともなく、また興味もなかった自分が、最近は史跡を巡っている。 きっかけは母を旅行に連れ出したかったからだともいえる。生計を立てることと育児とに人生の大半を費やし、贅沢もしないできた母へ…